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卒業生の声

2026.02.19

卒業生の声 VOL.30

稲石美翔さん(2011年卒業)

「教員の仕事を5分間で、この紙に書き出してください。」
これは、私が教職課程で、担当の先生に課された課題です。グループで一生懸命考えて、A4半分以上が埋まりました。周りを見回して、なかなかに私たちはよくやったのではないか、などと思っていると先生が紙を取り上げて一言。
「よく頑張りましたが、この3倍はありますね。教員はいわば究極の総合職ですから。」

実際に教員になってみると、まさしくその通りで、授業、面談、プリントやテストの作成など、生徒だった折に見えていた仕事は教員の仕事のほんの一部で、実際には部活動の活動場所の割振や教材の購入書類の作成、交通事故の付き添い、掃除用具の使い方の指導……、仕事内容は多岐にわたります。同時に、全体に目を配り、常に臨機応変に対応することが求められます。準備はもちろん大切ですが、準備した通りに一日が運ぶことはまずありません。そして同じ目的の授業でも、授業に参加する生徒やその時の雰囲気などによって達成度は大きく異なります。1組でウケたアプローチが2組ではスベる……だからこそ臨機応変に、様々なアプローチをすることが求められます。そしてそれが面白いのです。

様々なアプローチをするためには物事を多角的に捉えることが大切です。すべてのものは一義的ではないこと、それをまず知らなくてはなりません。そして、視点の数は知識の量に比例すると私は考えています。

大学には、様々な分野のスペシャリストが揃っています。使わないなんてもったいない!そう思い、学生の頃は学科の枠に捕らわれず、様々な講義を受けました。特に、平和学とフランス文学入門の講義は意義深かったと感じています。ドイツ文化が好きでドイツ語学科に入った私ですが、平和学を受けて欧州ばかりを見ても捕えられないドイツの姿があると痛感しました。ドイツも日本も、その他の国々も同じ地球上にあり、それ故に相互に作用し続けている。だからこそ大きな視点で、空間、時間を越えて考えることの重要性を学びました。フランス文学入門では、グループ発表をしたのがきっかけで教授とオフィスアワーを利用して研究室で読書会をするようになりました。文学作品の比較を通して、ドイツとフランスを比べ、話をする中で気づくことがたくさんありました。オフィスアワーは本当に素晴らしい制度だと思います。私はドイツ語学科の教授の研究室もよく訪ねていました。そこで教授とドイツ語で日本文化の話をし、どういった点がドイツ人には興味深く映るのか、理解しづらいのかを知れたことは教員になってから、ドイツ人の教員や生徒と接する中でも生きています。

現在、私は高校1年生と2年生に合計で週5時間、ドイツ語を教えています。(その他に英語を教えています。)その内4時間はドイツ人の教員とのチームティーチングで、授業では文法や会話のドイツ語はもちろん、ドイツ語圏の文化も教えています。大学の授業や先生方とのやりとりで学んだ知識や技術がダイレクトに授業に生かされていると感じます。
また、前任校では、アウクスブルクにあるポイティンガーギムナジウムと姉妹校協定を結びました。姉妹校の新規開拓は、大変でしたがドイツ大使館やアウクスブルクシュヴァーベン独日協会など、多くの方に協力をいただき、何とか実を結ぶことができました。その結果、生徒ともに1年に1度ドイツを訪問する機会を持つことができ、私自身生のドイツ語やドイツ文化に触れ、多くの刺激を受けました。そして何より、生徒がドイツ訪問を受けて「ドイツ語や英語をもっと頑張ろうと思った」、「ドイツの文化って面白い!もっと知りたい!」と言ってくれたことが嬉しかったです。

昨年2025年の8月5日には、希望生徒約40名を引率して上智大学を訪問しました。実は現在の勤務校は私の母校に当たります。当日は浅見教授の御厚意で特別講義をしていただき、学生ヘルパーの方々には学内ツアーと質疑応答をしてもらいました。生徒たちは皆、大変良い経験ができた、とキラキラした目で語っていました。

私は教員の仕事は「広い世界を見せる」ことだと考えます。私自身も素晴らしい先生方に出会い、彼らが見せてくれた世界に興味をもち、追い求めるうちにここまで来たような気がします。例えばドイツと一生関わっていきたいと思ったのは、高校の先生が参加を促してくれたドイツ政府の生徒招聘プログラムに行ったことが大きかったですし、学内で積極的に学生に関わってくださる先生方に会えなかったら私の使えるアプローチはもっと少なかったでしょう。
上智大学には、専門知識を持ち、学生の為に在学中は勿論、卒業後も積極的に関わってくださる教職員の方々、世界中からの留学生、勉学に前向きな同輩たちがいます。是非この環境を最大限に利用して、皆さんにも自らの可能性を広げて行ってもらいたいと卒業生として願っています。

(所属は取材時のものです)